日本積層造形株式会社(宮城県多賀城市、以下、JAMPT)が開発した「統合型金属積層造形システム」が高く評価され、2025年4月、第43回「日本産業技術大賞」において最高位である「内閣総理大臣賞」を受賞した。日本産業技術大賞は、産業技術分野における革新的な成果を表彰するものであり、JAMPTの技術は、日本発の金属3Dプリンティング技術として初めてこの栄誉に輝いた。(上部画像はJAMPTのプレスリリースより。出典:JAMPT)
目次
製造現場を革新する統合型システムが評価の鍵
本受賞の背景には、JAMPTが取り組んできた製造プロセス全体の最適化と、産業実装を前提とした技術統合の成果がある。単なる造形機能にとどまらず、設計・造形・後処理・品質保証を一貫して管理する「統合型金属積層造形システム」を構築し、製造現場に即したオンサイト生産を可能とした点が特に評価された。
AI最適化と非破壊検査で実用レベルの品質と効率を実現
このシステムは、製品設計段階から造形条件の最適化までをリアルタイムで制御し、AIによる造形パラメータの自動最適化機能を搭載している。また、非破壊検査技術としてレーザー超音波方式を導入しており、造形プロセス中の欠陥を即時に検出可能とすることで品質の安定性と生産効率を大幅に高めている。これにより、従来の試作開発から一歩進み、航空宇宙・自動車・医療機器・産業機械といった多様な分野への実運用が実現した。
オンサイト製造と国際競争力強化で切り拓く日本発AMの未来
特に注目すべきは、「オンサイト製造」への対応力である。同社のシステムは、需要のある現場で直接製造を行えるため、リードタイムの短縮や在庫レスの対応が可能となる。これにより、多品種少量生産に適した新しいものづくりの姿を提示している。
さらに、JAMPTの取り組みは国内技術の国際競争力強化にも寄与している。現在、金属積層造形技術は米欧中の大手装置メーカーが先行している分野であり、日本では後発と見なされがちであった。しかし、JAMPTは日本ならではの高精度・高信頼な製造技術と、デジタルモノづくりの融合により、独自の競争優位性を確立しつつある。
日本製造業の未来を担う挑戦と技術革新の象徴
同社の代表取締役は「今回の受賞は、技術者一人ひとりの挑戦の積み重ねと、日本の製造業が次世代ものづくりを担う覚悟の証である。今後も世界標準を見据えた開発を継続していきたい」とコメントしており、今後のグローバル展開やパートナー連携にも期待が高まる。
本受賞を契機に、国内の積層造形関連産業全体の技術革新が一層加速することが期待される。製造業の構造改革が求められる中で、JAMPTのような企業の台頭は、日本の産業競争力を支える重要な柱となるであろう。
JAMPT(日本積層造形株式会社)とは
JAMPTは、2017年に設立された日本初の金属3Dプリンティング専門企業であり、量産対応を可能とする国内有数の先進企業である。本社は宮城県多賀城市に所在し、東北大学発の技術を基盤に、産業革新投資機構(旧INCJ)など複数の出資者によって設立された。JAMPTは、設計・金属粉末選定・積層造形・後処理・検査までを一貫して提供できる統合体制を有しており、航空宇宙、自動車、医療機器、産業機械など多様な分野への製品供給を実現している。特に、品質保証と生産性を両立するためのAI最適化技術や非破壊検査技術を活用した製造体制は高く評価されており、近年はオンサイト製造やデジタルモノづくり領域でも注目を集めている。
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